神無月(詩)

靴をかくされ
ズクズクにやられて
叫ぶ口をふさがれ
捨てられた猫の目で
坂の上を 電柱を
泣けないという不幸
見たいテレビがない
ツタヤのカードを置き忘れ
牛丼でも
差し歯が取れる
できものだらけの店員
空気にたえられない
でも残せない
一円玉も五円玉も
千円札もない
五千円札を渡す
背中に視線を感じる
どうでもいい
海を見た
穴があくまで
一駅歩いた
歩きたくて歩いた
捨てたタバコの吸いさしが
子供を乗せた車に当たる
当分 いい天気
それも妙だ
こんな時期に
輪の中にいても
目隠ししているみたい
自分の手で
背骨を抜き取り
コンビニの棚を
片っ端から
追い払いたい
と、思ったのは30秒前
酔っ払いが
レジでへたり込んで
金髪のバイトに無視されてる
他人の目で
物事を思いやり
傷ついた胸を
遠くから
撫でてあげたい
と、歌う3:23
在り来たりでも
込み上げる
一月も五月も
千年祭り(ミレニアム)の幻が取れず
五千回 願う
あなたへの視線
どこで間違えた
東西線で見た
他のヒトといた
一駅前で降りた
別れたくて指輪を返した?
誰も拾わない温もり
大人のふりばかり
ドッグフードをつまむ
正月の福引きのやつが まだある
いい気持ちだった
でも 何も残らなかった
輪姦(まわ)された経験はない
きっと後味は同じ
葉隠れのフレーズをメモ
そこだけが取れる
着物の着付け教室をさぼり
気管支炎の治療にまわす
もったいない
時間も含め
坂上の マンションで
友達の親の不幸
みじめさに甘えてる場合ではない
誰からも忘れ去られたい、という矛盾
日陰に逃げ
もう夜明けを待ってる
胸の扉も 開けているのに…