某○井地下ピーコックにて

スーパーで買物を済ませ、エスカレーターを目指したその目の先に、老婆が後ろに転んだ。
これはいけない、と思い、買物袋とリュックを置き、CDのイヤフォンを外し、助けに入る。
老婆の前にも、坊主頭の青年が助けに入る。
エスカレーターは三人を乗せ、前後の二人は老婆の安否を確かめる。

ゴムの手摺りをバンバン叩き、「誰か!!店員は居ねぇのか?!!」と叫ぶ。
エスカレーターが三人を上に運びあげた時点でレジ嬢が停止ボタンを下の箇所で押した。

老婆、起き上がれない。が口はずっと達者だった。「起こして。立てないの。」と弱々しく。

坊主頭二人が老婆を抱え、起き上がらせる。
「大丈夫ですか?」等と云ってる間、彼が俺の買物袋とリュックを取りにいき、手渡す。
彼「停止ボタンが分かりませんでした、すいません。」
俺「いや、ありがとう。」

店員がこちらに向かってる、と小耳に挟む。
「でも、大丈夫ですから。」と老婆、去る。
知らぬ間に彼もいない。

その直後店員に声を掛けられるが、何を云ったか思い出せない。
「遅ぇんだよ、クズ!」と余程罵ろうかと一瞬思ったが、止める。
それと、咄嗟の救助で顔がきっと、こわばっていただろう。

複雑。