冬のタナトス 【詩 ・ バックナンバー】

「毎年クリスマスになると
 たくさんの街で
 自殺率が飛躍的に増える」

という事を 誰かが言ってた

茶色の木の葉舞う 木枯らし
干しイモや干し柿を片手にはしゃぐ 子供たちの写真

近衛兵が仁王立ちのロンドンや
しかめっ面のロシアの公園で
そこからこんな光景が 見えるかしら

ウミウシのヘタクソなブルース
とっくに閉鎖された海水浴場に
甘い思いを残すよりも
これからの季節を味わいかたを
僕は知っているから
ハロゲンヒーター並ぶ電器街
毎日がだんだん 好きになっていく

遠い過去の頼りない噂
喜びと空しさとは違う場所で
僕は根拠のない
安堵にもたれている

脳天気に見えますか?
つまらなさそうに 見えますか?

表参道で人と別れて
駅へと向かう道
大切な人と待ち合わせているにしろ
そうでないにしろ
ふと襲う寂しさを
ありきたりなものだ、と片付けて
この頃のシャッキリした空気を
微笑ましく眺めるのを

自分でもちょっと可笑しくも思える

新宿の夜

「毎年クリスマスになると
 たくさんの街で
 自殺率が飛躍的に増える」

という事を 誰かが言ってた