フェアエル 【詩】

じゃあもういいよ さよなら

わがままだったのはお互い様だったとしても
でも僕は 君を責めてしまうから
もし 君からの言い分が何もないなら
このまま君を憎んで 離れてしまおう

疲れてしまったんだよ

電車に揺られ ビルを抜け
駅を降り枯葉を蹴散らして
ひとりぼっちで 家まで帰り
スタンダードジャズで お茶を濁す

健やかに過ごすのに
君がいらなくなっただけ、としとく
美貌と才能は認めるよ
ただ それだけ
それだけなんだ

泡のようにたくさんの 君に対する想いを
無駄なものにはしたくはないけど
今はただ 込み上げてくるのは
思いやりではなく 怒りなんだ

ふられちゃったのは
こっちの方
こっちの方なのに
なんでそんな 情けない顔

コルクボードには
今月と来月の予定
ドアを出て バス通りを飛ばして
記憶の片すみに
大事なもの雑多なものを
詰め込んだり 追いやりながら
重い頭抱え 稽古場をやりこなす

与えたものを 返せとは言わない
ありがとうやら おめでとうの一言も無く
申し訳なさそうな
ふたつの顔が 並ぶ

ワインセラーの片すみのホコリ
つまらない取るに足らないもののように なればいい

分厚い本のシミ
潰れたシラミの死骸のように
空回りばかりした思い出が
どうでもなくなるようになればいい

それはセンチメンタルには程遠い
あと数センチ 足りない

潜在意識にフタをして
胃袋と肝臓を真っ赤にしながら
僕の中の歴史を
変えてしまうから

じゃあもういいよ さよなら