花瓶になる(詩)

人はいつから 花なんぞ好きになったのか?
森の中でイグアナが 不思議そうな目をする
曇ってばかりいる この頃の空も
さて 何もわからないといった様子

交差点を抜け アクセル
マイファニーバレンタインをカヴァーしたパンクバンド
カーステレオで表通りを2月13日
ロミオはジュリエットに 飽き飽きしてる
ロミオはロミオを辞めたがってる

黒装束を身にまとい
群れをなす 小羊
クレープの匂いにしがみ付き
甘く甘く 秒針と共に過ごす

そんな中 君を見付けた
泣き疲れたような顔が ほほ笑んでいる
今 それは記憶でしかない
きっと明日も 二人の距離を確かめるのだろう

花瓶になる
想いのひとかけらが飛び出す
水を漏らした事などはないが
君はイラだってばかりだ

君はいつから 羽根を休める鳥を嫌になったのか?
君の中の憎しみが 思いもしないところで暴発する
笑ってばかりいる 並べられた街並み
何もかも気にいらないと見える

茶店の端の灰皿
矢継ぎ早のペースで山をつくり
ジョー・ディマジオもこんなだったかな?
静かな闇に 誰もがきりきり舞い
ロミオはステージを降りたがってる

夕方のニュース
死後硬直 死体遺棄を救いだす手で
僕の中のみなしごを 追い出してはくれないか
ワイドショーにもならない孤独
細く高く 捨て猫が鳴き止まない

花瓶になる
吐息を拾い集め そうする
水を漏らした事などないが
君はイラだってばかりだ

ピラミッドがデカデカと描かれた広告
粉々になったピギーバンクが横たわる
その青い瞳が
空をまともに見れない

今日も君が食べ物を食べるリズムと共に過ごす
そんな生活 君だけを見付けられない
要らない何かを どうにかしたい
刺激とは違う 気晴らしを見付けたいのだけれど…

ポール・モーリアなんて大嫌いだ
「恋はみずいろ」なんて嘘っぱちだ